楽屋に怒鳴り込んできたおばちゃんの話
三味線といえば、今はもう津軽三味線がすっかりメジャーになってしまった。もしくは吉田兄弟や和楽器バンドなど…
あれ?それも全部津軽か。
いずれにせよ、津軽三味線は私から見てとても羨ましい。何といっても若手が多い。先日も「なでしこドレミソラ」という和楽器でバンドを作る高校生の女の子たちの漫画の記事を読み、読んでみたくなっている。
そんなわけで、すっかり世の若者には
「三味線は三味線単体で演奏する、もしくは他の和楽器と合奏する楽器」
とイメージされているように感じる。
それに対し、私は弾き唄いだ。弾いて、それに合わせて唄う。
三味線だけで弾く曲は、あまりない。基本的に仕事に呼ばれれば、それはもう弾き歌いで何曲か構成する。
演奏後に
「あっ、三味線って唄うんですね!」
と言われることもある。そう、唄うのだ。
三味線の歌も種類が色々ある。「浄瑠璃」は、歌詞が物語になっており、登場人物の台詞も多い。
誰それがどういう気持ちで何々をした〜
みたいなことを語る。ドラマチックだ。
当然歌詞は江戸時代に創られたままでそのまま残っている。
当然、今なら放送禁止になるようなキーワードもある。でも、そこは変えずに上演する。昔の映画に「当時の表現のまま残しております。一部の方には不愉快かもしれませんが。」みたいな、逃口上も言わない。そのままやってしまう。
これは私の師匠の話だが、ある日舞台を終え楽屋に戻った師匠は、突然の来客に驚いたそうだ。
その客とは、先ほどまで公演を見ていたお客のオバチャン。オバチャンは怒っていた。怒って師匠たちのいる楽屋に乗り込んできた。
「ちょっと!さっきの歌詞で女性のことを”おなご”と言ったでしょう?!しかも”おなごのような…”と、女性軽視の言葉を使っていましたね!非常に不愉快でした!!!」
と、それだけ言ってオバチャンは嵐のごとく去っていった。師匠はポカーンとして、「なんだあれ?」としか言えなかったそうだ。
でも、思う、おなごって、そんな悪い意味だったかな…?と。
おなごをなご 【女子】
女である子。また一般に、女。また、雇われている女。女中。
女中、という意味も含んでいるのが気に障ったのか…。じゃあ、「女性」とか「ご婦人」とでも言えばよかったのか。
という思い出話を、今「女子アナ」とか「女子種目」とか「女子会」というキーワードを見ながら思い出した。まあこれは読み方は「おなご」じゃないですが。
…「婦人アナ」「婦人種目」「婦人会」…悪くはなさそうですけどね。上品な感じします。