五社英雄「鬼龍院花子の生涯」を見ました
こんにちは、花枝です。
引き続き、気の合う友人との「昭和映画ナイト」。
今回は友人も私も大好きな「鬼龍院花子の生涯」を見ました。
- 高知の侠客・鬼龍院の繁栄と没落
- 「高知三部作」の伝説はここから始まった!
- ギラギラした五社英雄美学の宝石箱
- 個人的に大好きな岩下志麻
- 生きる力のない花子・生きる力を得た松恵の対比
- 「なめたらいかんぜよ!」は台本にも脚本にもない名台詞
- やっぱり大好きな映画!
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高知の侠客・鬼龍院の繁栄と没落
「鬼龍院花子の生涯」は高知出身の作家、宮尾登美子原作の小説です。
鬼龍院一家の養女として引き取られた、松恵。
松恵の視点から見た鬼龍院一家の繁栄と没落までを描いています。
ちなみに、タイトルになっている鬼龍院花子とは鬼龍院政五郎(すごい名前だ)の娘。
パッケージの夏目雅子は養女として引き取られた、鬼龍院松恵です。
この点よく勘違いされているので、映画スタート早々に
「え?夏目雅子が鬼龍院花子じゃないの??え??え???」
とのっけから衝撃を受けます。
「高知三部作」の伝説はここから始まった!
この作品は五社英雄の代表作にもなった映画で、映画のヒットを受けその後宮尾登美子の小説を立て続けに2作撮影します。
- 鬼龍院花子の生涯
- 陽輝楼
- 櫂
は、「高知三部作」と呼ばれています。
ちなみに、「櫂」は原作を大いに変更してしまったため、「櫂」以降は五社英雄は宮尾登美子作品から手を引くことになります。
ギラギラした五社英雄美学の宝石箱
五社英雄監督作品といえば
- 女同士の取っ組み合い
- 絢爛豪華な映画セット
- ダイナマイトの大爆破
です。
「鬼龍院花子の生涯」では女同士の取っ組み合いはおとなし目に描かれてはいるものの、絢爛豪華な映画セットとダイナマイトの大爆破はかなり楽しめます。
登場人物の着物の艶やかさ…
鬼龍院家の映画セットの重厚さ…
噴き出す血と汗の大立ち回り…
どれをとっても五社英雄美学が光り輝いています。
個人的に大好きな岩下志麻
この作品で、鬼龍院政五郎の正妻、歌役に岩下志麻が抜擢されています。
今ではすっかり「極妻」のイメージの強い岩下志麻ですが、それまではお嬢様女優として小津安二郎映画などで活躍していました。この作品でおなじみ”極妻”キャラの原型である”姐さん”キャラが開花されたそうです。素質を見抜いた五社監督がすごいですね。
歌はいかにも極道の妻らしい佇まいで、子分から尊敬され、政五郎を支えています。
歌は決して松江に対して無責任に優しい振る舞いをしません。時に厳しく当たる時もあります。
ですが、政五郎が
「女が勉強なんかしたらいかんぜよ!!」
と言っている横で、松恵が勉強すること自体は止めません。
「勉強するために鉛筆を買いたい。」
という松恵に
「この家のお金はお父ちゃんのもんや。お父ちゃん(政五郎)に頼み。」
と言い、決して勉強することそのものを止めようとはしないのです。
最後、歌はチフスを患ってしまいます。死の間際、松恵にこう言います。
「あんたを娘として愛したかった…」
このシーンが大好きです。
生きる力のない花子・生きる力を得た松恵の対比
そして、
「どっ…どこでこんな女優見つけてきたんだろう!?」
と思うほど、ある意味インパクトの大きい鬼龍院花子こと”花ちゃん”。
花子は政五郎の娘として、大変甘やかされて蝶よ花よと育てられるのですが…これがまた見事なまでに”生きる力のない愚かな女”として描かれている!!
これはね、花子が美人では全く物語にならないのですよ!
花子があのビジュアルだから素晴らしいのです!!!!
(高橋英樹・観月ありさのドラマ版は花子が可愛すぎる!のでちょっと違う感があります…。)
花子が唯一自分の力を出したところが、切り込んで言った父(政五郎)から男を守るシーンなんですけど、それでもあのラストになっちゃうのが…。
そういった悲しい女・鬼龍院花子のビジュアルも含め、この映画は本当に素晴らしいと思うのです。
「なめたらいかんぜよ!」は台本にも脚本にもない名台詞
映画解説でお馴染みの町山さんと時代劇評論家でおなじみの春日太一さん(ご両者とも書籍読んでます!ファンです!)も、下の動画で「鬼龍院花子の生涯」を語っています。
町山智浩の映画塾!「鬼龍院花子の生涯」<予習編> 【WOWOW】#183
町山智浩の映画塾!「鬼龍院花子の生涯」<復習編> 【WOWOW】#183
あ、でも若干ですけれど
「そこは解釈がちょっと違うな〜。そういう見方もあるのか〜。」
と思うところもありますが、舞台美術の話や裏話などはかなり勉強になりました。
これをみた後ではもっともっと作品が楽しめることでしょう!
やっぱり大好きな映画!
わー、もうやっぱり五社英雄映画大好きなので…特に「鬼龍院花子の生涯」は大好きなので、長くなりますね。
146分とかなりの長丁場で、しかもカットされたシーンが映画一本ぶんぐらいあるらしく、結構話のつなぎはデタラメなのですが…。
やっぱり最後はしんみりしてしまい、そういった点も含めて好きです。
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