花枝の三味線ブログ

高知で三味線の演奏・指導をしている花枝のブログです

道徳の教科書に”和楽器”が出ても実際に学校で和楽器は学べないのでは?

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こんにちは、花枝です。

 

あまり時事問題には明るくないのですが、一つ気になった記事を見つけました。

 

パンを和菓子、アスレチックを和楽器

ネット界隈では話題になっていることですが、道徳の教科書についてです。

www3.nhk.or.jp

記事の中には

小学1年生のある教科書では、申請段階では、物語に友達の家のパン屋を登場させていましたが、「国や郷土を愛する態度」などを学ぶという観点で不適切だと意見がつけられ、教科書会社は「パン屋」を「和菓子屋」に修正しました。

これについて、教科書会社は「日本文化であることをわかりやすくするため和菓子屋に修正した」と話しています。

とあります。

一般的に広く知れ渡って、そして話題にもなっているのはこのパン屋さんのくだりのようですが…

 

こちらの三沢文也さん(id:TM2501)の記事内では、その他の表記にも不可解な訂正が入ったことを指摘されています。

www.tm2501.com

 

www.asahi.com

「パン屋」を「和菓子屋」に変えたり、「おじさん」を「おじいさん」に変えたり、「アスレチック」を「和楽器」に変えたりしているそうですね。

 

和楽器奏者、指導者として耳が痛い指摘

記事の中で三沢さんは

他にも、朝日新聞によると、「アスレチックで遊ぶ」が「和楽器に親しむ」に教科書の記述を変えさせられた教科書もあるそうだけど…子どもの習い事としては圧倒的にピアノの方がメジャーですわ!!ちゃんと人数も出てくるし、圧倒的に多いし…。

 

それどころかだ!!
そもそも流儀が複雑で、愛好家の人口さえサラッと検索できない和楽器を伝統だなんだと振りかざす無神経さと時代錯誤感が信じられん!!

 

「資本主義によって普及されたものが全て正しい」とはいいませんよ?

でも、「国や郷土を愛する態度」と言った時に、ほとんどの人がよく知らないモノを「伝統だから」の一点張りで担ぎ上げるのは、果たして愛する態度なんですか??

と指摘されています。

 

これは邦楽指導者としては本当に耳の痛い話です。

 

和楽器よりもピアノやギターの方が圧倒的に慣れ親しんでいる人口は多い。

それは間違いないことです。

 

そして特に「流儀が複雑で…」の部分は私自身が邦楽に携わる身でありながら、流儀や流派の説明は難しく、手間取る部分でもあると感じています。

なんとか分かりやすくできないものかなあ…と流派や流儀について話すたびに思います。

 

私ももちろん邦楽や和楽器がもっと一般的なものになれば、そして親しみやすいものになれば…と思っていますし、そうなるための活動を日々重ねています。

…ですがなかなか追いつかず…歯がゆい思いもしています。

 

学校で和楽器に親しまないのに教科書には出すの?

そして何より残念なことが

「学校で和楽器に慣れ親しむためのカリキュラムすら組まれていないのに、道徳の教科書では和楽器に慣れ親しむことが日常のことだというような表記を出すの?」

ということ。

 

私は地方の田舎に住んでいるので活動の限界がありますが、地元の小中学校へ邦楽の指導を申し出たことがあります。

実際に指導をすることになったケースももちろんありますが、それは一度限りだったり長く続かないものばかりでした。

 

学校側としては取り組みたい意思はあるそうなのですが

「文科省が定めたカリキュラムをこなすのに精一杯で、和楽器を指導に取り込める余裕がない」

「和楽器の指導ができる先生が少ない・学校によってばらつきが出る」

とのことでした。

 

表面上だけ「伝統を大切に」と言われても…

私が取り組んでいる三味線、そして和楽器全般がもはやサブカル…マイナーな文化になっているのは間違いないことです。

それは邦楽に携わる中で痛いほど感じています。

 

それなのに、いきなり道徳の教科書で

「これが日本の伝統です!!!」

と押し付けるように描かれたとしても、それでいわゆる”愛国心”が育つとは思えません。生徒は混乱すると思います。

その生徒の親世代すらも和楽器はマイナーな文化だと思っているだろうに、無理な話です。

 

私は正直なところ和楽器指導者・演奏者として、こんなところでだけ都合よく和楽器を持ち出さないでほしい、と思いました。

 

親しんでもらう・受け入れてもらうために

とはいえ、「和楽器」という文字が目に触れる機会が少なくとも少しは増えるじゃない…それはそれで有難いことじゃないか…

と思う気持ちも実は少しあります。勝手な言い分だとは思いますが…。

 

でもそれは根本の解決にはならないこともわかっています。

多くの人に邦楽が近しいものに感じてもらえるよう、今動ける邦楽関係者がもっと普及推進活動を進めていかないと…それも、これまでの手法と同じではなく、時代に合わせた方法で進めないと…といつも感じています。

 

このように言っていただけるのは本当に有難いことです。

まだまだ課題はたくさんありますが、長い時間をかけて取り組んでいくことなのかなと思います。

 

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