先代のお家元さまから頂いた財布
5年ほど前の話になる。
亡くなられた、先代のお家元さまからお財布を頂いた。
その財布はとてもとても薄く、札入れのような財布だった。
カードも二枚ぐらいしか入らない。ポイントカードを持ち歩くのが苦手な私には最適な財布だった。
その薄手の財布は大活躍した。
お家元さまからいただいたものということもあり、長く大切に使っていこうと決めた。
だが、その薄手の財布を、ひょんなことから無くしてしまった。
ことの顛末は旅行に行く際、なるべく身軽に行こうと思い、財布を変えたときにどこかへやってしまったことがきっかけだった。
最初はそのうち出てくるだろうと思い、しばらく代用の財布を使った。
しかし、件の薄手の財布は出てこなかった。
ここにあるだろうと思ったところにもなかった。当てが外れた。
どこかへ捨ててしまうようなこともしないので、きっと書類や本の間に挟まってしまってわからなくなったのだろうかと思った。
仕方なく財布を買い換えようと思い、数件店を覗いてみたが
やはりあの薄手の財布に勝る使い心地の財布には巡り会えなかった。
そうしているうちに、2月になった。
私の誕生日と近い誕生日の友人のプレゼントを買いに、立ち寄った店で
「これはもしかしたら使えるかもしれない」
と思うような財布に出会った。
だが、保留にした。
もう一度帰ってから考えようと思い、その日は友人のプレゼントを買うに留めた。
それから一週間が過ぎ、今日こそその財布を買いに行こうと思ったとき
お家元さまから頂いた件の財布が見つかった。
それも何度もなんども探した場所から見つかった。
新しい財布は買わなくてもよくなった。
財布は1年、もしくは2〜3年で買い換えた方が良いとはいうが、こうなってしまっては買い換えどきが分からない。
今もわからないままである。